クリスマスイブは手術室で。その2(2015/12/27)

「クリスマスイブは手術室で。その1」にて、1度目の痛みを抑えるためにおこなった治療はうまくいかず次なる手段へ。

後日、入院は12月24日に決定。ん?クリスマスイブ?あらら…とはならず、以前年末に手術して新年を病院で迎えたこともあるのであまり気にすることもなく。1つだけ、クリスマスケーキは食べたかったなぁと思うくらい。1泊で終わるらしく、がんばろう!ってわけでもなく痛いの嫌だなぁと憂鬱な日々を過ごすわけでした。

新たな痛みを抑えるためにおこなう方法。舞台は手術室、透視で位置を確認しながら針を刺していくもの。さらに2通りの治療を説明していただき、先生のおすすめは背中から骨盤内へ100mm程度の針(長い!)を骨盤内まで到達させ、目標の地点に薬剤(エタノール100%)を注入する方法。神経を破壊して病巣付近の痛みを取り、さらには足のしびれも和らげようという作戦。副作用との兼ね合いを考えても自分には都合よいこともあり、この作戦の実施を前提に計画を進めるよう決定。ちなみにもう1つの方法は、仙骨と尾骨の間から針を(こちらはさほど深くはないが)刺して薬剤(同じくエタノール100%)を注入するもの。どこかイメージ的に「尾骨に針を刺す」というのが強烈で、どちらかと言えば前者かなと思ったのも事実。決まることは決まってクリスマスイブへのカウントダウンはスタートしたのでした。

街はクリスマスムード、などとはこれっぽっちも感じない田んぼ道を病院へ向かうタクシーは走り続け、運転手さんとの世間話でも景気がいい話題はないまま本日の戦いの場へ到着。入院するのは緩和ケア病棟、各種の説明などを終え昼食はコンビニのサンドイッチを食べた。1泊2日限定の入院でなんとなく病院の食事は敬遠したい気持ちもあった。治療の前1時間は絶飲食で、まだ時間もあったので寝ころんでのんびり。と思っていたら「予定が1時間早まりました」という知らせが入り、急にあわただしくなってしまったわけでした。車いすで手術室へ向かうと、なんとそこには赤い服着たサンタクロース…なんているわけもなく、薄いグリーンの手術着を着たスタッフの面々。頼もしそうに見えたのがせめてもの救いですね。さぁ、いざ手術台へ。

消毒、局所麻酔などひと通りの手順を済ませ透視で確認しながらの治療になりますが、前述のとおり稀代の痛がり。消毒の冷たさにビビり局所麻酔から叫んでいたことは言うまでもなく、 加えて100mmの針!痛い時も下手したらそうでなくても痛がっている始末。先生やスタッフの方々には大いにご迷惑をおかけした次第です。苦労の甲斐(刺したのは先生やっ!)もあって針は目標地点へ到達、造影剤で確認した上で薬剤を注入。量が多いことと何と言ってもエタノール100%の刺激、刺す痛みが終わったと思ったら大きな痛みの第二波が、しかもしばらくの時間継続していきました。気絶するかしないかという状態だったようにも感じつつ薬剤の注入終了。長い針もゆっくりと抜かれ、本日の戦いは終わりを告げたのでした。

どこかしら安堵感が漂う空気の中、世界の誰よりもホッとしていたのは自分。ようやく終わった、病室へ帰れると思っていたのですが、まわりの様子がなんとなくそうでもない感じ。治療のためのうつ伏せになったままの姿勢でいると先生から。

「ノブさん、相談が…」「今の姿勢で造影、がしっかり撮れているし、せっかくだからもう1つやっときましょうか?」

「えっ?もう1つって?あの、えっと、例の尾骨あたりからのやつですか?」

 「そうです。合わせればより一層の効果も望めると思いますけど…、どうしましょうか?」

まさしく聞いてないよー!!って感じ。この場で、しかもこの状態で決めるというのも酷な話。答えは単純、YesかNoか。えーっ!どうする?よーく考えたうえで、なんて時間などあるわけもなく、やらないよりはやった方が…。はっきり言って自分でもよくわからないまま先生に、

「お願いします。」

と伝え、次の治療へそのまま突入。局所麻酔から尾骨あたりから針を刺していくのだが、今度は場所が浅い所だったこともあり最初の治療よりは痛みも少なく、と油断していたら薬剤の注入。これが浅い所だけに激痛というよりお尻をそのまま火の中へ放り込まれたような感じで、同様に叫び声を残してそのまま抜け殻になったのでした。

これで本当に終わり。先生とスタッフにお礼を伝えそして先生には、

「僕のサンタさんは先生でした。」

と一言。手術室を出る時にはスタッフのみなさんに、

「よいお年をお迎えください。」

年の瀬のあいさつを済ませ、病室へ戻っていったのでした。ただしベッド上での安静。夕食はコンビニのドリア、それとせっかくの今日という日にショートケーキを1つ。美味しかった。

窓から見えていたのは暗闇に広がる一面の田んぼの遥か遠く遠くに、クリスマスを楽しんでいるのか家の灯りがポツポツと。

あぁ、今年のクリスマスイブお酒は飲まなくても100%のエタノールは体内に。ロウソク刺さずに針刺して、せめてものショートケーキは食べた!

いろんな痛みとともに病室のベッドで静かに迎えたメリークリスマスなのでした。